意外と知らない!?売上目標を追いかけると赤字になりやすいという話。

あなたの会社は数値目標を立てていますか?

経営の本を読んだり、経営セミナーに参加したりすると、事業計画を立てなさいとか、定量的な目標を立てなさいというような話をよく聞きますよね。定量的な目標のない会社運営も家族経営や少人数の会社であれば成り立つような気はしますが、社員さんを雇用する会社であれば定量的な目標(目安)を置く方が良いと思います。

定量的な目標と聞いて、ほとんどの人がはじめに思い浮かべるのが「売上目標」だと思います。まずは売上が立たなければ固定費が支払えなくなり赤字になってしまうので、まず大前提として売上が最も重要という点はその通りです。しかしながら、売上が最も重要だからといって、売上目標を第一に掲げて数字を追いかけてしまうと赤字になりやすいということを意外と知らない方が多いように感じます。

売上目標を第一に掲げるとなぜ危険なのか?

売上目標を第一に掲げると危険な理由は、売上を上げるために値下げをして販売してしまったり、不必要な経費をかけてしまう可能性が高くなります。特に、営業担当者を売上目標で管理し、かつ売上達成度合いに対してインセンティブを与えるような運用をされているような場合は、その傾向が顕著に出てしまいます。

営業の方からしてみれば、いくら値下げをして売っても、どれだけ販促費をかけて売っても売上目標を達成すれば評価されて給与も増えるので、そうするのは当然ですよね。会計リテラシーがある方であれば、値下げが全体の収益に与えるインパクトがどれだけ大きいかということは分かりますが、多くの営業担当者さんは会計リテラシーを持ち合わせていないため、なかなか自己制御させることは難しいと思われます。

このように売上目標を第一に掲げた運用をすると、利益率が下がり、販管費も増え、赤字に転落してしまう可能性が高まってしまうのです。

これを読まれている経営者さんの中には、「そんなバカなことする会社ないだろう」と思われる方もおられるでしょうが、実際に私が相談を受ける企業さんの中には、このような運用をされており、収益性が低い状態に陥っているところは結構多いです。経営者さんが気づいていないだけで、現場ではこのような運用をされていることもありますので、今一度自社が実際どうなっているか確認してみてください。

ではどのような項目を定量目標として掲げると良いのか?

定量目標として、一番わかりやすいのは売上高から原価を差し引いた「粗利」だと思います。営業担当者さんが「粗利」を目標として追いかけるためには、品目ごとの「原価」の情報がリアルタイムで更新され共有されていなければなりませんが、それが出来れば営業担当者は「(売上単価−仕入原価)×数量」で粗利を計算しながら、個々の目標となる粗利を確保することを目指して活動を行うことが出来ます。

次に、「粗利目標はどのように設定したら良いのか?」という疑問が湧かれた方もおられると思います。ズバリ、月次の粗利目標は、「会社全体の月の固定費(借入金の支払利息等も含む)+目標利益」の金額にしてください。少し目標を高めに設定した方が達成率が高くなると思われるなら、その金額より少し高い金額を粗利目標として設定しましょう。

そして、目標設定と共に重要なことは、価格決定についての社員教育と、毎月の会社全体の損益を営業担当者と共有することです。社員教育については、少しの値下げや販売単価アップが全体の収益にどのようなインパクトを与えるのか?ということなど、お客様に提案を行うにあたっての心構えを教育します。数値の共有については、毎月の活動の結果を数字で認識することにより、自らさらに粗利を高めようという意識が芽生えるきっかけとなります。「社員には最小限の情報しか出したくない」という考え方の社長様、その考え方では今後会社は永続していかないと断言します。

現場ごと、取引先ごと、時期ごとなど、様々な状況の変化に臨機応変に対応をしなければならない環境では、ルールや規則で統制するということが難しくなります。よって、フロントに立つ社員さんがそれぞれで判断して対応しなければならないですが、それをするために最も必要なのが、より多くの情報を社員さんに共有しておくことです。一部の情報しか持っていない社員さんと、経営者と同じだけの情報を持っている社員さんでは視座の高さが大きく異なるという事実を念頭に置いて、情報共有をしっかりと行うようにしましょう。

今回は「売上目標を追いかけると赤字になりやすい」という話をしました。特に数字に強くない経営者さんの場合、売上目標を第一にして儲からない状況に陥りやすいという印象です。粗利を目標にすること、その目標数値をどう設定すれば良いのか、またそれを運用する際に大事なことは何か、という点について書きましたので、是非御社にも適用できることがあれば導入してみてください。

合同会社Libra近江は、「サポートを必要とする企業や人々の役に立つことを自社の事業と定義する」という経営理念のもと、悩める中小企業の経営者さんのお役に立てるよう、ちょっとした相談には無料でお答えしています。事業に関して困っている、どうすれば良いか分からないということがあれば、お気軽にお問合せフォームよりご相談ください。

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この記事を書いた人

澤田 晃仁のアバター 澤田 晃仁 合同会社Libra近江 代表社員

地方銀行に13年勤務し、滋賀県内や大阪の支店で法人営業、審査部で企業格付審査、融資審査、再生支援部門に従事。銀行退職後、当時債務超過だった中小製造業に転職し、在籍した4年間で営業、開発受託窓口、製造部門管理者として事業再生を果たした。また、商品開発部マネージャーとしてゼロから新規事業の立上げも経験した。2022年5月に中小零細企業向けの事業再生コンサルタントとして独立。

経営学修士(MBA)、認定事業再生士(CTP)、ターンアラウンドマネージャー(TAM)、事業承継士

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