自己資本の少ない会社は節税をしてはいけません!!

「節税」と聞くと、経営者なら誰しも魅力的に感じるでしょう。しかし、自己資本の少ない会社にとって、安易な節税はかえって経営を悪化させる危険性を孕んでいます。

なぜ自己資本が少ないと節税が危険なのか?

節税は、確かに一時的に税金の負担を減らすことができます。しかし、多くの節税はキャッシュアウトを伴います。自己資本が少ない状態でキャッシュアウトしてしまうと、手元資金が枯渇し、資金繰りが悪化する可能性があります。

自己資本が少なく利益も少ないので、いざ資金が必要になった時に資金調達ができなかったり、有利な条件で融資を受けられなかったりする事態に陥ります。

特に、保険やオペレーティングリースなど、キャッシュアウト型の節税商品には注意が必要です。

  • 保険: 解約のタイミングにより解約返戻金が掛金より少なくなるリスクがあり、逆に最も解約返戻金の多いタイミングで解約すると利益計上され、結局税金がかかります。ですので本当にお金が必要なタイミングで、損なく解約するのは非常に難しいと思います。
  • オペレーティングリース: リース期間中は費用計上できますが、リース期間中に資金が必要となってもリースに投じた資金は取り戻すことは出来ません。また、保険と同様、リース終了時に利益計上されれば結局税金はかかってしまいます。

    こう考えると、キャッシュアウト型の節税商品を使って節税するのは意味が無いように思いませんか?

    ※オペレーティングリースとは:賃貸人が行う航空機や船舶等のリース事業に出資し、リース期間中に生じる収益並びに損益を出資割合に応じて取り込む一連の取引です。最終的には、リース物件を売却することでキャピタルゲインを得られるもの。リース期間前半では課税上の損金が、リース期間終了後には対象物件を売却することによる益金が発生します。

上手く使うとメリットがある場合も、、

もちろん、節税が有効に働くケースがあります。それは、儲かっている時にかけた節税商品の解約益が最も高くなるタイミングで、大きな赤字を出して解約益を相殺できる場合です。解約益が出るタイミングで単純に業績が悪化して赤字になった場合や、社長交代のタイミングを合わせて退職金で大きな赤字を出す時などは、メリットがあるといえます。

しかし、何が起こるか分からない会社経営の中で、そこまで計画的に数年先の赤字を作り出すのはけっこう難しくないでしょうか?

自己資本を積み上げるメリット

それなら節税に固執するのではなく、しっかり税金を払い、利益を積み上げて自己資本を増やす方が、以下のように多くのメリットがあります。

  • 資金調達: 自己資本比率が高い方が、金融機関からの信頼度が高まり、資金調達がしやすいことに加え、より有利な条件で融資を受けられます。
  • 資金繰り: 手元資金に余裕があれば、資金繰りに困るリスクが減り、事業を安定して運営できます。
  • コスト削減: 安い金利で借りることで支払利息負担を減らせます。また資金調達に奔走する時間や資金繰りを管理するコストを削減できます。

あなたはどちらを選びますか?

目先の節税に囚われて、将来の成長を阻害するリスクを負うか、それとも、しっかり税金を払い、自己資本を積み上げて、安定した経営基盤を築くか。あなたはどちらを選びますか?

かくいう私も、銀行員時代は利益が出ている企業さんに対して節税商品をご提案したこともあります。今から思えば、なんと愚かなことをしていたのかと恥ずかしくなります。どちらにせよ税金から逃げ切ることは出来ないので、払える時にしっかり払ってしっかり自己資本(利益)を積み上げていきましょう。

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この記事を書いた人

澤田 晃仁のアバター 澤田 晃仁 合同会社Libra近江 代表社員

地方銀行に13年勤務し、滋賀県内や大阪の支店で法人営業、審査部で企業格付審査、融資審査、再生支援部門に従事。銀行退職後、当時債務超過だった中小製造業に転職し、在籍した4年間で営業、開発受託窓口、製造部門管理者として事業再生を果たした。また、商品開発部マネージャーとしてゼロから新規事業の立上げも経験した。2022年5月に中小零細企業向けの事業再生コンサルタントとして独立。

経営学修士(MBA)、認定事業再生士(CTP)、ターンアラウンドマネージャー(TAM)、事業承継士

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