経営者様向けブログは、中小企業を経営されている経営者様のお役に立ちたいという想いで、日ごろのコミュニケーションの中で出てきた疑問にお答えしたり、現場で感じたことを書いています。
会社設立9年目に入り、直近の売上高は約3,000万円です。創業資金として当初2,000万円を借入し、現在の借入残高はコロナ融資を含め1,600万円になっています。直近決算は200万円弱の赤字であり、自己資本はマイナスになっています。今回、資金繰りを回すために日本政策金融公庫に新規融資を申し込んだところ、「これ以上新規融資は出来ない」と言われました。それをそのままメインバンクに伝えたところ、銀行担当者から「リスケ手続きをしましょう」と勧められましたが、リスケをするとどうなるのかがイマイチよくわかりません。
リスケとは、リスケジュールを略した言葉で、銀行借入の条件変更をするという意味です。条件変更といっても、返済期日そのままで返済額を下げる、返済期日を伸ばして返済額を下げる、一定期間返済をストップする、貸出金利を下げるなど様々な方法がありますが、一般的には返済期日はそのままで元金をストップするか返済額を下げるというのが一般的な手続きになります。
「返済を軽減してもらえるならラッキー」と思ってすぐに手続きをしてしまいそうですが、場合によってはリスケをすると大ピンチに陥る可能性があるので注意が必要です。リスケをすることの一番のデメリットは、リスケをするとその後新たに借入が出来なくなるということです。取引銀行が複数ある場合も、リスケは全取引銀行が同時に実施することになるので全銀行から原則新たな借入が出来なくなります。
リスケをしても良いタイミングは、足元の事業収支自体は黒字で返済を軽減すれば資金繰りが問題なく回るという場合のみです。足元の事業収支が黒字であれば返済をストップすると、その間は預金を積み上げて体制を整えることが出来ます。一方で、絶対にリスケをしてはいけないタイミングはまだ足元が黒字化出来ていない時です。このタイミングでリスケをしてしまうと、返済をストップしていても預金が減っていきます。その預金が底をついた時、銀行からの新規融資も受けられない状況なので、たちまち資金ショートしてしまうのです。
では、そのような場合はどうすれば良いか?まずは、黒字化に向けた経営改善の道筋をしっかりと立てて行動し、黒字化の目途を立てることが大前提です。その目途が全く立たないようでは、どちらにしても事業は成り立たなくなってしまいます。足元がまだ赤字でも改善活動によって黒字化の目途を立てることが出来れば、経営改善計画(改善の取組を実行した場合の予想数値)の策定を行い、取引銀行に反復の融資の交渉をすることが出来ます。このような場合に取引銀行の担当者がリスケを勧めてきている場合は、「いまリスケをしたらすぐに資金ショートしてしまう」「反復融資をしてもらえれば黒字化できる」と説明をして、リスケではなく融資を依頼するようにしましょう。
この相談者さんの場合は、直近は赤字、自己資本マイナスではあるものの創業当初に借入した金額よりも返済を進めている実績がありました。コロナの影響で直近は赤字ですが、コロナ前までは減価償却前黒字で事業収支がプラスだったので、コロナ明け&経営改善に向けた活動により黒字化の目途が立つ状態でした。よって、リスケをしてしまうと足元の資金繰りが詰まって窮地に陥りますが、反復融資をしてもらえれば建て直して黒字化することは可能です。結論として、この相談者さんの場合は実現可能性の高い経営改善計画を作成したうえでメインバンクに反復融資をしてもらうことにより、復活に向けて動き出すことが出来ました。おそらく、銀行担当者に言われるがまま安易にリスケをしてしまっていたら、今頃資金ショートしていたと思います。
それではなぜ、銀行担当者はリスケを勧めてきたのでしょうか?銀行の担当者も決してあなたを困らせようと思っているのではありません。むしろ善意の気持ちで勧めてくれていると思います。銀行担当者が、リスケをしてはいけないタイミングでリスケを勧めてくるのは、ほとんどは担当者の知識不足が要因です。企業側からすると、銀行員はプロだと思うかもしれませんが、本当に資金繰りや財務面を理解できている銀行員は意外に少なかったりします。特に担当者が「頼りない」「若手」という場合は、基本的に分かっていないと思って接していた方が安全です。特にリスケなど会社の資金繰りに直結するような重要な話は、銀行担当者に言われるがままに進めず、今の状況でそれをしたらどうなるかと想像力を働かせながら自ら判断するようにしましょう。