あなたの会社は本当に赤字ですか?

会計上の赤字と、収支の赤字は別物です。

金融機関からの紹介や商工会さんの専門家派遣などで、自社の状況に不安を抱える経営者さんと面談をすることが多いですが、「うちは毎月赤字でお金が減っていく、、」とおっしゃる会社でも決算書や試算表を見せていただくと黒字になっていることがあります。経営者さんの中には、会計に対して苦手意識をもっておられる方は少なくありません。特に、年商3億円未満の会社では毎月の試算表を作っていなかったり、試算表を作っていても見ていないというケースも多々あります。

会計上黒字なのに、「うちは赤字、、」と言っておられる場合は、借入金の返済や仕入の先行支払などによって預金が減っていっている状態を赤字ととらえられている場合が多いです。中小企業経営にとって資金繰りを把握することはとても大事な要素ですが、会計上で黒字になっているかどうかをリアルタイムで把握することもかなり重要な要素です。自社の会計が把握できていないことにより、無用な不安を感じ経営判断に支障をきたしたり、大きなミスジャッジをしてしまう恐れがあります。

毎月預金が減っていて漠然と不安を抱えている経営者は、まず何をするべきか?どのように判断をすれば良いのか?という点についてお伝えしたいと思います。

まず初めに、マストですべきことは毎月試算表を作ることです。

私が伴走支援に入らせていただく際に必ずお伝えしていることは、毎月必ず試算表を作り、その数字を毎月しっかりと見るということです。税理士さんへの支払いは多少増えますが、それよりも毎月の経営成績が見えないことのデメリットの方が遥かに大きいので、毎月試算表を作成することはマスト中のマストです。

もちろん、試算表を作成することが目的ではなく、それを見て経営判断をしていくことが目的です。経営判断というと大げさですので、まずは「自社の状況を知る」ということが大事です。先月は会計上の黒字だったのか?それとも赤字だったのか?その原因はどこにありそうか?ということを考えるだけでかなり変わりますので、まずはそこから始めてみましょう。

会計上は黒字なのにお金が減っていく場合はどうしたら良いか?

会計上は黒字なのにお金が減っていく理由は大きく以下の2つです。1つ目は、借入返済額が毎月の利益よりも大きい。2つ目は、入金サイトよりも支払サイトの方が短い仕事で売上が増えた。

1つ目の「借入金返済額が毎月の利益よりも多い」というのは実はよくあることです。運転資金(売掛金回収までに支払う経費や在庫を仕入れる資金)を長期借入金で調達している場合や、その借入期間が短い場合は会計上の利益が黒字でも、毎月の借入返済額の方が多いケースがよくあります。その場合は、借入返済が進んだ程度の金額の運転資金を新たに借りるか、既存の借入金とまとめて借り直せば、また預金口座の残高が増えて不安な状態からは脱することが出来ます。会計上黒字なので借入も問題なく行えるでしょう。このようなケースの場合は、毎年決算書を銀行に提出するタイミングで運転資金を調達するというサイクルを自社で決めておいても良いと思います。

「入金サイトよりも支払サイトが短い仕事が増えた」という場合も、会計上黒字であればその旨を銀行に説明をして銀行から資金調達をすれば済む話です。

ここで大事なのは、自社がいま黒字になっているのかどうかを把握することです。毎月預金口座のお金が減っていく場合でも、会計上の黒字経営をしていれば銀行は問題なくお金を貸してくれます。そのことが分かっていれば、銀行に試算表を見せてコミュニケーションを取り、資金調達をするだけなので無用な不安を感じることは無くなります。

じゃあ、会計上赤字でお金が減っている場合はどうすれば良いの?

預金が減っていて会計上も赤字となるととても不安になりますよね。会計上の赤字は、今のやり方では経営が上手くいっていないということなので改善活動をしないといけません。ずっと赤字のまま放置すれば、どれだけ銀行から融資を受けてもいずれ倒産は免れないです。先ほどの繰り返しになりますが、ここでもまず試算表を見て、赤字を見て、「このままではヤバイ!やり方変えないと、、」と認識することがスタートなので、試算表すら作っていないという会社はこのスタートが遅れ取り返しがつかないことになってしまいます。

まず一番初めに取り組むことは、試算表を眺めながらムダな経費を発見し削減することですが、多くの企業の場合は、経費削減だけで黒字化することは稀です。根本的に黒字化するために販売単価の値上げの実施、製造ロスや廃棄ロスの削減、作業や業務のやり方を根本から見直すなど、様々な改善を検討し実行していく必要がありますが、経費削減に比べて改善するために少し時間がかかります。

その時間を稼ぐために、黒字の場合と同じように銀行から借入返済が進んだ金額程度の運転資金調達を試みましょう。借入残高がそこまで大きく無い場合は、赤字や少しの債務超過の場合でも保証協会付の融資で調達できる可能性があります。メインバンクが無理でも、サブメインの金融機関や日本政策金融公庫など当たれるところは全て当たりましょう。それでも、どこの金融機関も融資が出来ないという回答の場合は、リスケ(金融機関借入の返済元金をストップしてもらう)をして改善のための時間を稼ぐしかありません。

ここで注意点としては、リスケをするとその間は新しく借入が出来なくなることです。たとえ借入金の返済元金をストップしていても赤字が続けば赤字の分だけ現金が減って資金ショートしてしまいます。いずれにせよ、黒字化に向けた改善活動を行い黒字にすることは必須なのです。

会計上の赤字でお金が減っていく場合の対処法は、まずすぐにできる経費を削減すること、次に時間のかかる改善活動に取り組み始めつつ金融機関から運転資金を調達する(無理の場合はリスケ対応してもらう)、そして資金調達orリスケで時間を稼いでる間に経営改善を成功させる。この流れが王道です。資金調達やリスケだけして、あとの経営改善活動を実行出来なければ遅かれ早かれ必ず倒産しますので、会計上の赤字であると分かってからはそんな危機感を持って取り組む必要があります。

経営改善といっても何からやっていいか分からないという方へ

会計上の赤字だと認識し、経営改善に取り組みたい気持ちはあるが、何をどう改善したいか分からないという方は、まずお近くの支援機関に相談に行かれるのもありです。商工会議所、商工会、よろず支援拠点、その他県の支援機関などの支援機関では、中小企業診断士資格を持った相談員さんがおられる他、専門家派遣制度で課題に沿った専門家への無料相談が出来たりします。当然、専門家にも当たり外れがありますが、無料で相談できることや、何か気づきになる事もあるので活用されると良いと思います。

ちなみに、滋賀県であれば私が商工会議所、商工会、滋賀県産業支援プラザの専門家登録をしていますので、ご指名いただければ私が直接相談対応をさせていただけますよ。

合同会社Libra近江は、「サポートを必要とする企業や人々の役に立つことを自社の事業と定義する」という経営理念のもと、悩める中小企業の経営者さんのお役に立てるよう、ちょっとした相談には無料でお答えしています。事業に関して困っている、どうすれば良いか分からないということがあれば、お気軽にお問合せフォームよりご相談ください。

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この記事を書いた人

澤田 晃仁のアバター 澤田 晃仁 合同会社Libra近江 代表社員

地方銀行に13年勤務し、滋賀県内や大阪の支店で法人営業、審査部で企業格付審査、融資審査、再生支援部門に従事。銀行退職後、当時債務超過だった中小製造業に転職し、在籍した4年間で営業、開発受託窓口、製造部門管理者として事業再生を果たした。また、商品開発部マネージャーとしてゼロから新規事業の立上げも経験した。2022年5月に中小零細企業向けの事業再生コンサルタントとして独立。

経営学修士(MBA)、認定事業再生士(CTP)、ターンアラウンドマネージャー(TAM)、事業承継士

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